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ビューティーテックの未来を予測する6つのポイント
他の多くの産業と同様に、テクノロジーの進歩は美容の世界を急速に変化させています。世界の美容業界の規模は5300億ドル(日本円にして57兆円以上)を超えています。CB Insights社によると、美容機器市場だけでも740億ドル(日本円にして約8兆円)規模の産業です。さらに、新型コロナウィルスは、これらの新しい成長技術の多くを加速させる力となっており、自宅にいながらデジタルで化粧品を試すことはその一例であり、サステイナブルなパッケージ、e-makeupの開発、さらには化粧品パッケージの一人ひとりに合わせたパーソナライズ印刷などは、メイクアップの世界を劇的に変える美容トレンドです。
それでは、ビューティテクノロジーの未来について6つの驚くべき予測をご紹介します。
1) e-makeupとオンラインペルソナのデザインとビューティーテクノロジーの未来
e-makeupとは、まだ聞きなれないかもしれませんが、ソーシャルメディア(Instagramなど)のフィルターを使うのと同じようなテクニックです。最近では世界中のモデルやセレブの中で、SNSに実装されているものとは違う新しいタイプのe-makeupを使って、自らのインスタグラムで発信をすることが増えています。化粧品会社は現在、これらのテクニックの開発を主流の1つにしています。e-makeupの素晴らしい点は、新しい化粧品が出るたびに自分に合うように新たなメイクの研究に時間をかけたり、本物の化粧品を塗ったりしなくても、今まで自分では考えつかなったようなメイクや、非日常的な大胆なテクニックを試すことができます。
様々なe-makeupツールをダウンロードした後、その中のデジタルの自分に独自の人物像を作り与えることができます。ソーシャルメディア上のアバターのように分身のキャラクターを持つことで、現実の世界に一歩踏み出す前に、バーチャルな世界で新しいメイクアップのトレンドを試すことができます。また、自分だけのe-Lookを作ることで、オンライン上の個性を確立するのも楽しいものです。
かつては富裕層や華やかなランウェイモデルだけが使用していた化粧品が、今では誰もが使用できるようになりました。この傾向は今後も続き、より多くの選択肢が提供されるでしょう。これらの選択肢は、従来のメイクアップにとどまらず、一般の人が日常でも使える微妙な変化から特別な日仕様の劇的な変化を起こすツールとして、あらゆるものが含まれるようになるでしょう。オンラインデザイナーのイネス・アルファは、この成長トレンドの最先端を行く作品を生み出すアーティストの一人です。
AR技術を使ったメイクアップ作品を作っています。彼女の活動もその一例でしょう。
2) スマートミラーの登場
化粧品を使うほとんどの人にとって、メイクアップミラーは欠かせないものです。最近開発されている最先端のミラーの中にはセンサー付きのものがあり、さまざまな彩度の光の中で化粧をすることができる上に、センサーによって肌の悩みを分析し、自分に合ったスキンケアや化粧品をアドバイスしてくれるなど、より複雑な機能を備えるようになってきています。
その中でもスマートミラーと呼ばれるものは、Wi-Fiに接続することで、ユーザーに完全なるインタラクティブ(双方向)な体験を提供します。このようなスマートミラーの多くは、デバイスにダウンロードできるアプリを備えています。また、音声認識機能やカメラを搭載したものもあります。それらは、ユーザーの肌を分析し、肌質における特定のニーズを即座に判断して、ユーザーに合った美容製品をその場でおススメすることができるのです。
近い将来、スマートミラーはさらに進化し、もっと素晴らしいことができるようになるでのではないでしょうか。簡単な音声が会話になり、双方向の会話が成り立つことで毎朝のメイクアップをガイドしてくれるようになります。そうなると、まさに自分の家に専属の美容アシスタントがいるような状況になると言えるでしょう。そしておそらく最終的には家庭内のすべてのスマートデバイスと接続され、顔認識機能により、鏡に映っている人を瞬時に認識し、それに応じてすべての指示をスマートミラーから調整することすらできるような未来が待っていると思います。
3) 進化するバーチャルリアリティ
化粧品を購入する前に実際に試すことは、自分に合った商品を選ぶための必要な手段です。現時点ではまだ実店舗に行って試す人の方が多いのではないかと思います。しかしながら、これからはバーチャルリアリティー(VR=仮想現実)によって自分に合う化粧品を購入前に選ぶという手法がどんどん進化していくことになるでしょう。
バーチャルリアリティ(VR)は外界を遮断した完全な没入型の体験であり、先に話題となったオーグメンテッドリアリティ(AR=拡張現実)は現実にさまざまな種類のデジタル要素を追加するものです。この2つの技術は似ているようでいて、はっきりとした違いがあります。『Vogue』によると、バーチャルリアリティメイクの芸術性と科学的分野に関しては、異なる分野であるビューティ(美容)がITの最先端をいくシリコンバレーと出会い、交わるようなものだと言っています。美容の世界に関しては、バーチャルリアリティの方が適しており、今後も進化していくと思われます。
化粧品やその他の化粧品を購入する前に、実際に試してみることは、今後ますます増えていくでしょう。これは、実店舗でもオンラインでも行われるでしょうが、上記のバーチャルリアリティには、3Dフェイススキャンも含まれていて、一人ひとりに最適な製品を見極める技術が日々進化しており、実店舗で試す機会は減っていくかもしれません。
Glossy社は、仮想現実と拡張現実の美容技術の新しいバズワードとして、「フィジタル」という言葉を強調しています。化粧品を試すプロセスは、フィジカルな体験とデジタルな体験の両方を組み合わせたものになっていくでしょう。新型コロナウィルスの流行もあり、当面は、お客さまが自宅で安全にメイクアップを試すことが、より安全で、良いビジネスモデルであると考えられています。
4) 持続可能性とマインドフルミニマリズム
多くの企業が “Less is More “というスローガンを採用しています。
現在、平均的な人は1人につき40個の化粧品を所有していますが、実際に使うのは5個程度しかないという統計があります。このような結果から消費者は、より多くの経験を得られつつ、より少ない使用量で済む方法を探しているのではとないかと考えられます。また、多くの美容関係の顧客は、完全なビーガンの生活をしていなくても、動物愛護と環境保全の精神に基づいたビーガンの化粧品を探して使っています。ビーガンとまではいかなくても、リサイクル可能な素材を使用することは、すでにほとんどの美容メーカーのビジネスモデルの一部となっています。
上記のようにすでに多くの企業がリサイクル可能なパッケージを使用していますが、将来的には再利用可能なパッケージがより美容の世界でも広範囲に使用されるようになるでしょう。Cosmetics Designによると、多くの企業がすでにリデュース、リユース、リサイクルという取り組みに投資しています。何度も詰め替えられるように作られた美しい容器は、ビューティ&フレグランス業界の廃棄物の量を劇的に減らすでしょう。
また将来的には、大手化粧品メーカーのほとんどが、さまざまな倫理基準を遵守し、’’less is More”に則した認証を受けるようになるでしょう。そうなれば、廃棄物エネルギーを活用したマルチベネフィットの製品も提供されるようになり、ひとつの製品で複数の役割を果たす製品が市場を席巻するでしょう。将来的に成功する企業は、ユーザーが求めるすべての効果を、より少ない製品数とパッケージで実現する方法を見つけ出すことができるような企業であることが求められるはずです。
5) 気分に影響を与える機能性フレグランス
香りは、人の気持ちや考え方に影響を与える強力な手段です。パーソナルフレグランスの開発は、製品をカスタマイズする新しい手法の一つです。エスティローダーをはじめとする香水・化粧品メーカーは、一人ひとりの香りの好みを特定・把握するためのアンケートを研究し開発しています。そしてそのアンケートを実施し、その結果に基づいてオリジナルのボトルを作成し、顧客に提供しています。
香りは個人の気分に影響を与えるだけでなく、香りに反応して気分が変わるようにもなります。先進的な香水のガラスのボトルには、スマートフォンなどと接続できるデザインが採用され、これにより、ユーザーは気分に応じて、ベースノート、ミドルノート、トップノートのバランスや構成を変えることができるようになります。つまり、自分のその時の気分に合わせて操作することで、成分の組み合わせによって、香りが即時に変化していくのです。
パーソナライズされた香りは今後も拡大していくでしょう。テクノロジーによって、過去の経験から得た特定の香りや、記憶を呼び起こす香りが再現され、身につける人のためにオンリーワンな香りがデザインされます。最終的には、指紋や個人の目のスキャンのように、自分だけの香りを手に入れることができるのではないでしょうか。
6) 3Dプリントでメイクを作成する
今、最も注目されているのは、自分だけのオリジナル・メイクアップを開発・作成できることでしょう。パーソナライゼーションは、現在、いくつかの業界で研究開発が最先端を走っていて、医薬品から化粧品まで、あらゆるものがパーソナライズされたサービスに向かっています。これらのテクノロジーは、3Dプリンティングプロセスによって、この方向に急速に進み続けています。
まず、自分の顔の写真を撮ることから始まります。次に、自分の好きなメイクの種類や色など、別の写真を探します。その写真を3Dプリンターに読み込むと、ソフトウェアが解析し、好みのメイクを再現してくれます。化粧シートをトレイに挿入すると、プリント作業が始まります。
Mink社には、カスタマイズされた化粧品を作ることができる3Dプリンターがあります。このプリンターは1,600万色以上の色相を印刷することができ、人類が想像できる限りの色を選択することができます。現在は、チークやアイシャドウなどのパウダー製品のみを製作していますが、将来的には、マニキュアやリップグロスなどのリキッド製品も作ることができるでしょう。
テクノロジーの進化は、現在私たちの生活のほぼすべての側面に及んでおり、その中には美容業界も含まれています。最先端のテクノロジーを駆使して、一人ひとりが最高の気分で、最高の見た目を手に入れたいというニーズに応えることで、パーソナライゼーションの流れは今後も続いていくでしょう。