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遠隔医療が世界の医療現場に与える8つの影響
新型コロナウイルスによるパンデミックで、これまでよりもはるかに遠隔医療の重要性が高まりました。遠隔医療ならば、外に出られない状況でも治療を諦める必要はありません。医療従事者とネットや電話でやり取りすることも新しい常識となりました。しかし、遠隔医療そのものは以前からあったものです。
この記事では世界の医療現場がすべての人を怪我や病気から救うために、遠隔医療をどのように活用しているかについてご紹介します。
1.専門医のオンライン診療
これまでは専門医の診察を受けたい場合、患者の方から出向く必要がありました。当然旅費や宿泊費も必要となり、結果的に医療費も高額になります。また遠隔地では人口の少なさなどから専門医を常駐させられないため、高度な医療サービスを受けることができませんでした。
例えば北米の地方にある小さな鉱山町には診療補助が可能な診療看護師がいるだけで、神経学の専門医はいないかもしれません。しかし診断は必ずしも大都市にしかない高度な医療設備が必要なケースとは限らず、専門家さえその場にいれば適切な診断や治療が可能な場合もあります。
現在では現地の医療従事者の診断結果に基づき、必要であれば地球の裏側からでも専門家からの支援や診断を受けることが可能になりました。仮に緊急性の高い患者が遠隔地にいても、必要な治療を容易に提供できます。
2.遠隔医療での患者教育
今世界中で必要性が高まっているのが、医療従事者が患者や介護者に病気の知識を伝える患者教育です。正しい知識を得ることで、病気の予防や、悪化を防ぐことができるからです。時には治療そのものよりも行動変容の方が病気に対して効果が高くなることもあります。
医療従事者がいない地域でも、動画や音声などの教材を提供することで誰でも患者教育を受けられるようになります。
3.災害医療対応車の進歩
災害が発生した際、設備や医療品などの問題で優秀な医療従事者を現地に派遣できないことがあります。高度な医療設備を搭載した災害医療対応車があれば、医療従事者が現地に入って対処することができますが、それだけでは様々な怪我や健康問題を抱える患者全員には対応できません。
そこに遠隔医療を加えれば、現地の医療従事者が病院や他国を含む専門家の知見を得ることが可能となり、患者に対してより最善に近い対処ができます。具体的には遠隔地にいる専門家の意見を元に現場が適切な治療を決定し、それぞれの患者に合わせた治療を受けられる病院に搬送できます。
4.医療従事者支援
治療に当たる医療従事者は、常に患者の最適な治療方法を把握することはできません。通常は複数の医師が話し合って治療方針を決定しますが、医師の不在などでそれができない場合、遠隔医療がその解決策となります。離れた都市や国の異なる専門医が連絡を取りあって患者の症例について話し合い、画像や検査結果を共有し、過去の記録を比較して最適な治療方針を決めることができます。
これは稀な病気や珍しい症例に有効なだけでなく、一見単純な症例であってもセカンドオピニオンを必要とする場合にも非常に有用です。一人の医療従事者が全ての病気を知ることは不可能であるため、必要な時に他者の支援を受け、自信を持って治療方法を判断できることが重要です。
5.発展途上国への医療支援
発展途上国の多くは、医療システムの不備から先進国と同レベルの医療サービスを受けられません。結果として医療に格差が生まれ、発展途上国では普通のインフルエンザや出産などによる死亡率が高くなっています。
格差の原因は教育機会の不足であったり優秀な人材の流出であったりと様々ですが、そうした国であっても、遠隔医療は包括的な医療システムを構築する手段となり得ます。医師が国の垣根を越えて連携することで、発展途上国の健康問題に対処し、死亡率を改善することができます。
6.異言語間コミュニケーション
世界には6,909の言語が存在するため、医療の現場に通訳が常駐する環境を作ることは容易ではありません。そのため様々な背景を持つ人間が集まる大都市では、異なる言語を話す患者への対処が大きな問題となります。これまでは近くに通訳がいないと適切な対応は難しく、診断に支障をきたすこともありました。
今はリモートで通訳を使えるため、必要であれば通訳、患者、医師の3者間での通話も利用して必要な情報を確実に収集・管理できます。
7.農村部における医療機関の維持
地方の医療機関を維持することの難しさは多くの人が知っています。農村部など、都会から離れた場所で働くことは困難が多くフラストレーションが溜まりがちで、孤独感やサポートの少なさを感じることもあるでしょう。
こうした状況にある場合も、遠隔医療を通じて他の専門家のサポートを受けられる選択肢があれば、地方で働くことへのモチベーションも高まりそこに留まって医療を続けられる可能性も高まります。
8.医療費の削減
遠く離れた場所にいる医師の診断を受けようとすると旅費などの費用がかさみますが、遠隔医療であれば移動の必要なく診断を受けられるため、全体の医療費を削減することが可能です。
現在はインターネットがどこにいても利用できるようになったため、医師は時間と場所を選ばずに仕事ができ、連絡も取れるようになりました。医師に直接会ったり検査のため移動する機会を必要最小限にできるため、ガソリン代や宿泊費などの間接的にかかる経費を少なくできます。
遠隔医療は20世紀から行われてきましたが、本格的に普及してきたのは近年です。無線の高速インターネットが普及し、世界中のあらゆる場所で通信できるようになったことで、遠隔医療の潜在能力も解き放たれました。