目次
依存症治療のためのアプリレビュー: BMC MAT アプリ
OUD(オピオイド使用障害)は、QOL(生活の質)にかなりの悪影響を及ぼし、米国では疫病と考えられています。また、OUDは、罹患率や死亡率が著しく高い病気です。一般的に、OUDは慢性的で生涯続く病気であり、再発することも珍しくありません。それにもかかわらず、命を救うことができる証拠に基づいた医学的治療法があるのです。しかし、残念ながら、多くの患者さんはこれらの治療法を受けることができません。
オピオイドには、ヘロイン、モルヒネ、フェンタニル、コデイン、そしてオキシコドンなどの合成オピオイドがあります。OUDの治療には、ブプレノルフィンやメタドンからなるオピオイド補充療法を行う必要があります。これにより、罹患率や死亡率のリスクが減少できるのです。再発防止にはナルトレキソンが有効であり、オピオイドの過剰摂取にはナロキソンが用いられます。
BMC MATアプリの目的は、OUD患者の救命治療へのアクセスの向上であり、医療従事者に科学的に有効だと証明されている利用可能な医療の選択肢を教示し、サポートすることです。
ボストン・メディカル・センター: はじめに
ボストン・メディカル・センター(BMC)は、ボストンの南に位置する非営利の民間アカデミック・メディカル・センターです。毎年100万人以上の患者が訪れ、70以上の医療専門分野とサブスペシャリティを持つBMCの医師の多くは、各分野のリーダーであり、最先端の医療技術を使用しています。
ボストン医療センターはこのたび、医療従事者がエビデンスに基づく依存症治療を患者に提供するための初のアプリBMC MAT Appを開発しました。このアプリの開発には、マサチューセッツ州公衆衛生局とオピオイド・リソース・ネットワークを介して、物質乱用・精神衛生サービス局が一部出資しています。
BMC MATアプリの対象者とは
長年の研究により、ブプレノルフィンなどの依存症治療薬は、オピオイド使用障害の人々の命を救い、過剰摂取による死亡のリスクを低減することが明らかになっています。また、オフィスでブプレノルフィンを投与することで、注射薬の使用に関連した高リスクの行動が減少することも明確になりました。それでも、ブプレノルフィンやナルトレキソンなど、OUDの治療に利用できる薬は、残念ながら十分に活用されていません。「Annals of Internal Medicine」に掲載された2018年のある研究では、オピオイド過剰摂取の生存者10人のうち、ブプレノルフィンやナルトレキソンによる治療を受けたのはわずか3人でした。
このアプリの開発を主導したボストン・メディカルセンターのオフィスベースのアディクション治療のディレクターであるコリーン・ラベルは、「薬物療法によってオピオイド使用障害の患者さんの命が救われることは、データからも確かであり、これらの薬物療法へのアクセスを増やすことが私たちの役割です。このアプリのようなテクノロジーと革新的なアプローチを使えば、オピオイド使用障害の患者さんを治療するためのエビデンスに基づくガイドラインやリソースをプロバイダーに提供することができます。」と述べています。
BMC MATアプリの目的は、オピオイド使用障害の患者を治療する医療従事者をサポートすることです。このアプリは、オピオイド使用障害を薬物(ナルトレキソンまたはブプレノルフィン)で治療するためのガイドラインとリソースを提供します。
BMC MATアプリの価格
BMC MATアプリは、AppleのiTunesストアおよびGoogle Playから無料でダウンロードできます。
全米のアディクション危機に対処するために重要なテクノロジー
オピオイド使用障害は、世界で1,600万人以上が罹患しており、そのうち210万人以上が米国です。世界規模で見ると、オピオイドが原因とされる死亡者数は年間12万人を超えました。米国では、2020年5月までの1年間に、過去最高となる81,000人以上の薬物過剰摂取による死亡者が発生し、依存症の危機に直面しています。
2019年の「薬物使用と健康に関する全米調査」によると、12歳以上の160万人以上がOUDに苦しんでいるとのことです。さらに、OUD患者の間では注射薬の使用が一般的であり、HIVや肝炎などの生命を脅かす病気のリスクも高まっているという事実に憂慮しなければなりません。また、薬物中毒やOUDをきっかけとした薬物関連の犯罪も多く見受けられます。
依存症のコストは、医療制度に大きく影響します。このような状況において、BMC MATアプリのような先進的なアプリケーションは、医療従事者がこの非常に脆弱な患者グループの治療を計画する際の重要なサポートとなります。
BMC MATアプリのメリット
BMC MATアプリは、臨床アルゴリズムに基づいて構築された、使いやすくインタラクティブなアプリケーションで、OUD患者を治療する際の意思決定プロセスの各ステップにおいて、介護者や医療従事者を支援します。
このアプリでは、OUD の診断基準 (DSM-5®)、臨床オピオイド離脱スケール (COWS)、アルコール使用障害判別テスト(AUDIT-C)など、いくつかの便利で重要な評価ツールにもアクセス可能です。
医療従事者がOUD患者の治療方法を決定する際に役立つクイックスタートツールもアプリに含まれており、OUDの既往がある患者さんの慢性疼痛を管理する方法についても記載されています。
BMC MATアプリの代替品
この種のアプリとしては初めてのもので、同じ機能を提供する代替品はありません。この分野の他のアプリの多くは、回復中の患者をサポートすることを目的としています。例えば、「 MARR Addiction Treatment App」や 「Recovery Connector App」は、回復中の患者が同じ経験をしている人たちとのネットワークを見つけることに重点を置いています。「 Pear reSET-O®」も興味深いアプリで、外来治療を強化するために開発された、OUD患者のための12週間の処方箋アプリケーションです。
アプリについての評価
AppleのiTunesストアでは、BMC MAT Appは5つ星の評価しか受けていません。あるユーザーは次のようにレビューしています。「このアプリは素晴らしい。あなたが依存症医療に携わる医療者であれば、このアプリは素晴らしいリソースです。」
Google Playでは、別のユーザーが5つ星をつけ、「Android版はわかりやすく、素早く、使いやすい 」と評しています。別のユーザーは、「このアプリには Suboxone (ブプレノルフィン/ナロキソン) は含まれていません!」と、1つ星の評価をしていましたが、このフィードバックには、BMCからすぐに返信があり、改善策を検討することを約束してくれました。
留意点
オピオイド使用障害の患者を救うために医療システムが奮闘している中、個人的にも社会的にも高いコストがかかっています。また、この病気に起因する苦しみや破壊的な行動は膨大なものです。BMC MATアプリを使えば、医療従事者は、エビデンスに基づいた方法でこのグループの患者さんを治療するためのサポートや指示に簡単にアクセスできます。これにより、多くの患者さんが効果的な治療を受けられるようになることを願っています。
「何百万人ものアメリカ人が物質使用障害に苦しんでいますが、そのうち治療を受けている人はごくわずかです。このアプリは、オピオイド使用障害を治療するための薬へのアクセスを拡大するために、リソースとガイダンスを提供します」とラベールは述べています。