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製薬における3D技術の役割
技術は急速に進歩しており、私たちの生活をより暮らしやすいものにするために新しく革新的な製品が開発されています。医薬品分野も例外ではありません。3D印刷技術の開発は製薬産業のあらゆる側面を強化しており、現在では3D薬剤開発技術により新しい投薬量や標的治療、さらに新しい薬剤を利用することができます。BrandEssence Market Researchによると、3D医薬品の市場価値は2025年までに4億3700万ドルに達するといわれています。
3Dテクノロジーとは
3D印刷技術は、航空宇宙産業やファッション産業などさまざまな分野に影響を与えています。積層製造やラピッドプロトタイピングなどの別名で知られているこの技術は、2次元印刷によってできた複数の2次元アイテムをレイヤー化することでオブジェクトを構築しています。製薬業界では、この添加剤技術は積層プロセスでさまざまな成分を使用します。
Pharmaceutical Technologyによると、Charles Hull博士が現代の3D印刷技術を開発し始めた人物であると記されています。Hull博士は1988年に発売された最初の市販3Dプリンターの発明者でもあり、2015年には彼が3D印刷技術を用いて開発した薬剤が3D治療薬として初めてFDAの承認を得ました。このように3D印刷技術はある意味で全く新しいものというわけではないのです。実際1984年には、3D技術を応用した初めての製品として小型の洗眼カップが製造されています。
3Dテクノロジーの種類
International Journal of Drug Development and Researchは、3D印刷技術を用いた印刷タイプをいくつか紹介しています。ここでは3つの印刷技術のタイプを挙げていきます。
- 3Dパウダーダイレクトプリント
コンピュータ化されたシステムが3Dの細かいデザインを設計するためにいくつかの層を作成し、そこにフィラメントの代わりに粉末やペレットを用いてオブジェクトを印刷します。 - 3D溶融堆積
異なる薬品でフィラメントをふさいだ後、溶融プロセスによって個々の錠剤を製造します。加熱したノズルから薬剤を押し出すと、薬剤が1層ずつ固まるような仕組みです。 - 3Dステレオリソグラフィ印刷
樹脂に紫外線のレーザーを使用する付加プロセスで、紫外線のレーザーが薬の形状を整えることでデザインをするタイプです。ステレオリソグラフィープロセス (SLA) は、2.5%~5%の濃度の薬剤を製造するのに用いられます。 そして3D技術を使用する場合、以下のような複数の印刷段階を経て製造されます。
- 製品の設計図やコンピューター・デザインの作成
- ソフトウェアがプリンタに設計図・デザインを転送
- 製品の加工・積層・構築
- 後処理機能とパッケージング
- テストと配布
3D印刷技術のメリット
- 少量の医薬品の生産
大量生産方式に頼らずに特定の種類の医薬品を少量生産することができます。これにより大規模な工場では製造できない、非常に特殊な医薬品の製造が可能になります。 - カスタマイズされた医薬品の作成
3D技術を使用してカスタマイズされた医薬品の特定の大きさや形状、そして投薬量を調節して製造できます。さらに製造後に薬剤を調整するのも簡単です。 - 迅速な薬剤評価
従来の製造・開発方法では、医薬品の迅速な評価・改訂はできませんでした。しかしこの技術によって医師や薬剤師は新しい薬剤を素早く手に入れることができ、より良い医薬品の提供が可能になります。 - コスト効率
ほとんどの業界で3D印刷技術を使用すると、材料費を削減してコストを節約できます。また、比較的使いやすく、プロセスをより安価にすることもできます。3Dプリントでは、複雑な製品を組み立てることは、単純な製品を組み立てるのと同じくらい簡単です。 - 迅速な製造
特定の医薬品の製造と流通は、3D印刷技術を使用することで非常に速い製造が可能になります。さらに、生産する薬剤の量の細かい調節も可能なので、使用される量だけを生産することができます。このように3D印刷技術を用いたプリンタは、従来の製造ラインよりもはるかに速く簡単な製造を可能にするのです。
3D技術のデメリット
- 原材料の品質の維持
生産管理戦略の実施と維持は必ずしも容易ではありません。プリントヘッドの目詰まり、タブレットの厚さの変化、およびプリントプロセス全体にわたる原材料の流れの変化などの問題が発生する可能性があります。印刷プロセス中に発生する品質不良には、反り、ずれ、および最終製品の崩壊の可能性もあります。 - 製造物責任
製薬業界では、偽造医薬品「コピー」の複製が問題になっています。薬の設計図を入手したハッカーは、薬を大量生産することができるようになってしまいます。また、薬をより市場性のあるものにするために、安全でない変更を加えることもあります。 - 安全性の問題
従来の医薬品は、厳重な監視の下で製造されていました。しかし3D技術を用いた製造において、FDAをはじめとする政府の監督機関がすべての印刷業務を規制し監視することは不可能です。さらにプリンタの欠陥についての問題も懸念されます。そのため、現在対処が必要な規制上の課題がいくつか挙げられています。
3 Dテクノロジーの将来はどうなるか
3D印刷技術は開発や製造、流通において、製薬業界の未来を大きく変える可能性があります。そのために技術の妨げとなっている欠点を改善する方法を見つけることは、大変重要です。さらに技術は発達を続け、新しいタイプの薬剤や生産の方法が開発されていくでしょう。
今日では、次のような最先端技術が開発され進化し続けています。
- デジタル化された薬物
いくつかの異なる放出メカニズムを持つ錠剤が開発され続けています。 - パーソナライズ化の促進
医薬品のパーソナライズ化は今後も進化していくでしょう。パーソナライズには、患者の年齢や体重などの因子だけでなく、臓器機能や代謝機能さらには個人の味覚や色の好みなど、より複雑な因子も含まれています。 - オンデマンド製造
医薬品の開発と製造は、病院やその他の医療施設で定期的に現場で行われます。このような印刷は、最終的には戦闘地域や宇宙ステーション、小規模な遠隔医療現場で行われる可能性があります。 - クラウドベースの接続
3Dプリンタをクラウドベースのソースに接続することで、医師は薬剤を製造しながら患者の健康情報にリアルタイムでアクセスすることが可能です。
医薬品開発に携わる人々は3D印刷技術を最大限に使いこなすために、様々な作業をする必要があります。例えば、個別化された医薬品を製造する際の一貫性を向上することや汎用性を高めるためにデバイス性能を向上すること、そしてプリンタヘッドの目詰まりを減らすことなどが含まれます。これらに加えて大規模な大量生産に対応した一貫性の提供も必要です。このような課題に対応して新たな進歩を遂げる一方で、やはり3D印刷技術は将来の医薬品開発と生産にとって不可欠なツールになる可能性が高いといえます。