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医療業界のAIについて今知っておくべき事
より迅速で優れた診断、かつてない高精度な手術、そして研究開発の超速や新しい治療法の開発まで、AI(人工知能)が医学界を席巻し続けています。意思決定が可能な高度なアルゴリズムと、「学習」できるビッグデーターを組み合わせる事によって、医療専門家はこれまでにない高度なツールを利用する事が可能になってきました。
いまさらながらAI(人工知能)とは?
AIとは、通常は人間の意思決定能力が必要なタスクを、コンピューターが判断、実行できるテクノロジー全分野の総称です。AIが搭載されたものは「スマート」機器と呼ばれ、サーモスタットやAmazonの音声アシスタントAlexa(アレクサ)などの家庭用アプリケーションから、大都市の相互接続とスムーズな運用を維持する高度なインフラストラクチャにまで多岐にわたります。
AIの技術は一昔前のサイエンスフィクションで取り沙汰にされた「機械は考える事ができるのか?」という問いに真正面から答えようとしています。映画や本では世界を支配しようとする悪の存在として人工知能を持った機械がよく描かれたりしていますが、今日のスマート機器は人間に対抗する存在ではなく、人間の独自の頭脳性質を最大限に活用して、人間と共存できるように設計されています。
AIは「自動」とは全く異なります。「自動」とは、機械が反復的なタスクを実行するロボット的な機能であり、より複雑な作業に注意を払う事ができます。それに対してAIアルゴリズムは、機械学習と呼ばれるプロセスによって、人間のインプットにほとんど依存せずにタスクの実行方法と判断方法を学習し続け、より複雑な作業をすることも可能です。
機械学習とは、アルゴリズムが正確で関連性のある結論と予測を算出するスキルを習得するためのトレーニングです。大規模なデータを使用して「学習」し、パターンと構造を見つけて適切な答えを導き出します。そして新しいデータに直面した時は、適応し学んでいきます。
深層学習モデルは、複雑な処理ができる多層ニューラルネットワークを使用して、AIアプリケーションをトレーニングしていきます。開発者が「Humans in the Loop」と呼ぶ考え方においては、人間は人工知能によって生成された情報を使用してアルゴリズムのパフォーマンスを改善し、そしてその洞察を使用してより高度な決定を行うことができます。
医学を変革するAI
AIアプリケーションは、ビッグデータに対して複雑な操作を実行する事ができます。世界中の研究データベースとデジタル医療記録の普及に伴い、クラウドに保存されているすべてのデータの約50%は医療業界が占めているといわれています。
医療系ビッグデータは、診断、研究開発、手術や各患者のプロフィールに合わせて高度に個別化されたケアを提供するための様々なアプローチなど、医療のすべての領域において有用なデータが格納されています。ここでは、AIを搭載したプラットフォームとツールの5大メリットををご紹介します。
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診断
診断には、医療AIアプリケーションがよく使用されています。クラウドの計算能力と幅広い資料からの大量の医療データにより、AIを搭載した診断プログラムは特定の疾患マーカーに関するビッグデータを、人間よりもはるかに高速かつ正確にスクリーニングする事ができます。人間の目で行う作業に比べて、より小さな異常も検出する事が可能です。
例えば、癌のバイオマーカーをスクリーニングするように設計されたAIは、過去のデータが入った大規模な画像データバンクでトレーニングを行い、病変、腫瘍、その他の細胞の異常を見つけ出す事ができます。AI診断ツールが答えを出した後、医師や専門家によるAI診断の結果の解釈を行ったうえで、適切な治療法を決定していきます。
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医薬品の研究開発
AIアプリケーションは、新しい治療法や薬を開発するプロセスで既に必要不可欠なツールとなっています。現在、医薬品を初期研究から市場へ出すまでの道のりには最大10年かかりますが、AIはその数分の一の時間で新薬を提供する事が可能です。 また、AIプラットフォームはビッグデータを処理してターゲティング用の正確なバイオマーカーを特定し、候補薬をこれらのターゲットに照合して臨床試験を迅速に追跡する事ができます。 AIを搭載したアプリを使って、研究中の様々な治療法の結果を予測するための仮想モデルを作成することも可能です。
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ロボット外科医
医療において最も有望なAIアプリケーションは外科医です。高度なAIプログラミングを用いたロボットデバイスは、人間の外科医よりもはるかに高い精度と一貫性を持って一連の外科手術を実行する事ができます。
外科チームの指揮下で、ロボット外科医「アシスタント」は身体の領域をマッピングし放射線療法やレーザーなどの治療を指示し、正確な切開を行い、内視鏡手順でのカテーテルの動きを指示する事ができます。
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遺伝子組み換えとゲノミクス
医学の最前線の1つに遺伝子配列組み換え分野があります。各個人の遺伝子構成を理解し、細胞レベルの段階でDNAを変更する事によって、希少疾患を含む様々な健康状態に合わせた治療法の作成が可能になります。深層機械学習とAIアプリケーションは、CRISPRなどの遺伝子組み換え技術のパフォーマンスを向上させ、遺伝学者はDNA配列を微調整して特定の疾患に関連する遺伝子を変更したり、より優れた結果を出す為にこの機能を遺伝子組み換えに利用したりする事ができます。
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個別治療プラン
AIの進化によって、すべての医療分野の専門家が、各患者の特定の状況、遺伝子構成などに高度にカスタマイズされた治療法を設計する事ができます。トレーニングが完了すると、AIプラットフォームは各患者をそれぞれ適切な治療法とすばやく一致させて、DNA、画像検査、その他の情報に基づいて最も適切なものを予測してくれます。
医療部門におけるAIシステムは、2021年までに67億ドルの収益を生み出すと予想されています。AIは、各患者のニーズに合わせたより安全でより賢い新しい医学モデルへの道をリードし、深層学習によって進化し続けているのです。