目次
一人ひとりに合った医療を提供する個別化医療とは?今知っておくべきこと
個別化医療は、医学界が今まさに受け入れようとしている新たな取り組みのように感じるかもしれません。しかし、ヒポクラテスの時代から存在していたのです。20世紀には、大規模な医療施設や企業による画一的な医療システムにより、個人に合わせた医療が後回しにされてきました。
ホリスティックな視点で患者を個別に治療せず、特定の症状の診断から、同じようなアプローチで各疾患の治療をすることを中心にしていたのです。現在は、個別のケアや治療に回帰する傾向にあります。 個別化医療について把握すべきことをまとめました。
個別化医療とは
現在、医療関係者は、多くの人を対象に実験を行った上で、治療法や薬を処方しています。その効果に関する統計的な平均値を使って、同じような状態、病気、診断を受けている人には誰にでも処方しているのです。これでは、個人全体を考慮した治療法を施しているとは言えません。医療関係者は、単に個人の状態や病気に基づいて治療を行うことから脱却しようとする傾向が強まっています。
臨床医は、遺伝子情報を利用し、各個人の様々な要因や属性を考慮した上で医療計画を立てることが可能になります。また、ゲノム(各個人の遺伝子情報)を用いて、各人の体内のタンパク質がさまざまな薬や治療法にどのように反応するかを調べることもできるのです。医療関係者の間では、個別化医療を「精密医療」や「層別医療」と呼ぶ場合があります。つまり、個別化医療とは、一人ひとりのニーズに合った医療計画を立てることです。
個別化医療を構成する要素とは
個別化医療は、シームレスに連携する必要があるステップの過程です。 個別化医療を有効にするには、いくつかの具体的な要素が挙げられます。
-
リスクの評価
遺伝子検査は、個人が生涯においてどのような種類の病気や健康状態に陥る可能性が高いかを判断するリスクアセスメントの主な方法です。個人の基本的な生物学的構成要素を確認することは、医療の個別化において大きな意味を持ちます。個人のゲノム、DNA、RNAを調べることは、そのための基本的な作業です。
-
防止策
遺伝検査を行うことで、医療関係者は、その人が一生の間にどのような病気にかかりやすいかをより深く理解することができます。これらの病気を予防するには、生活習慣や行動の改善が有効です。
-
検出方法
早期発見は、生活の質を向上させ、病気から回復する可能性が高まります。乳がんのリスクがある方の場合、個人向け医療プランでは、通常の方よりも頻繁にマンモグラフィを受けられます。万が一、乳がんを患ってしまった場合でも、早期発見が可能です。
-
診断方法
正確でタイムリーな診断は、最も効果的な治療を可能な限り早く開始するために重要です。臨床家は、可能な限り個別の治療と管理を提供するために、各人の診断の精度を高める必要があります。
-
治療法
様々な疾患や病状に対する治療方法は、個人によって大きく異なる場合があります。人のゲノムを解読し、DNAを理解した上で、医師はそれぞれの患者に合った治療計画を立てることが可能です。
-
経営について
個別のアプローチを適用することで、病気の継続的な管理や一般的なヘルスケアがより簡単になり、効果的になります。そのためには、様々な薬や治療法への反応を注意深く観察しなければなりません。
個別化医療を担うプロフェッショナルとは
個別化医療を成功させるには、医療、技術、ビジネスの専門家のネットワークが必須です。 Health IT Analyticsでは、個別化医療を可能な限り効果的に行うために、社会経済、医薬品、臨床の異なる情報を組み合わせることの重要性を述べています。患者に関するさまざまな情報をまとめるだけでなく、この過程にはいくつかの専門家グループが参加しています。
-
医療関係者
医師、看護師、セラピストは、それぞれの患者に個人的なアプローチをもたらす際に、相互協力が不可欠です。そのためには、それぞれの患者のケアに継続的な協力と対話型のアプローチが必要になります。
-
学術関係者
研究者たちは、遺伝が個人に与える新たな影響を次々と発見しています。彼らの研究は、特効薬や新しい治療法の開発に貢献しており、一人ひとりに最適な治療法を提供するためには、革新的な研究が欠かせません。
-
製薬会社
バイオ医薬品企業は、標的治療薬の開発に取り組み続けなければなりません。具体的な目標の一つは、新しい薬のラベルにゲノムデータを記載するゲノム薬の作成です。
-
IT関連企業
電子カルテが患者や医療従事者のニーズに応え、かつ安全性を確保するためには、継続的な技術の向上が必要です。 Forbesによると、個別化医療とテクノロジーは様々なレベルで継続的につながっています。
-
支払者と政策立案者
個別化医療を成功させるためには、保険会社や政府関係者がそれぞれの役割を果たす必要があります。保険会社は、遺伝子検査や個別化医療を補い、これらの費用を支払うことができるような方針を作成することが必須です。
個別化医療の具体例とは
患者が個別化された医療を体験するには、いくつかの具体的な方法があります。以下はその一例です。
-
生活習慣の改善
乳がんやアルツハイマー病など、特定の病気になりやすい体質の人でも、ライフスタイルを工夫することで、大きな予防効果があります。
-
がんの予防と治療
米国がん協会によると、特定の遺伝子変異が個人のがんリスクにどのような影響があるのかを調べることは、個別化医療の一環として行われています。遺伝子検査は、臨床医ががんのリスクを判断するために使用できる詳細な情報を提供します。
-
個別化された医薬品の開発
AJMC は、2018年に承認された医薬品の42%がパーソナライズド医薬品であったと報告しています。同報告書では、パーソナライズド医薬品の分野での成果として、C型肝炎の治癒、視力低下の回復、各種がんの生存率の向上などが挙げられています。
-
個々に応じた呼吸器治療を提供
プロテオミクスでは、タンパク質を分析することで、呼吸器系疾患の初期診断に役立ちます。肺がんのバイオマーカーの特定を改善することは、個別化治療の構築に有用です。
技術の進歩に伴い、個別化医療も進歩していきます。しかし、守秘義務、データベースの保管、コストなど医療関係者が取り組むべき課題もあります。医療関係者、法律関係者、IT関係者がこれらの課題に向き合うことで、医療の変革が進んでいくでしょう。予防と全人的治療に重点を置いた個別化医療は、ほぼ間違いなく標準となり、生活の質が向上し、医療費の削減にもつながります。