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「疼痛(とうつう)・ストレス・うつ」のためのバーチャル・リアリティプログラム

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「疼痛(とうつう)・ストレス・うつ」のためのバーチャル・リアリティプログラム

バーチャル・リアリティというと、多くの人はテレビゲームを思い浮かべるでしょう。しかし、VRは単なるゲーム用インターフェースではありません。医療従事者やパイロットの訓練にも活用され、うつ病や慢性疼痛の治療、さらにはストレスの軽減にも繋がります。

 

 

バーチャル・リアリティによる痛みの緩和

3ヶ月以上続く疼痛を「慢性的な痛み」と言います。多くの病気がこのような継続的な痛みの起因となる可能性があり、鎮痛剤での治療が困難な場合、別の方法が必要かもしれません。患者がバーチャル・リアリティプログラムにより、痛みの信号を脳が処理することを阻止できる事を、研究者たちは示しました。慢性的な痛みに苦しむ患者が、痛みのためのバーチャル・リアリティを使用するプログラムに参加すしたところ、疼痛レベルが急激に低下したのです。

これは、VRの没入感がもたらされ、継続的に襲う痛みの信号の受け取りを防ぐというものです。その結果、心が満たされてリラックスし、疼痛レベルが低下するのです。

バーチャル・リアリティは、慢性的な痛みの緩和のみに有用なわけではありません。心身の苦痛を伴う医療行為の際のストレスや不安、痛みを軽減するために利用されることもあります。

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バーチャル・リアリティによるストレス解消

バーチャルリアリティは、痛みの緩和だけのものではありません。アメリカ人の約50%が、ストレスは仕事の成果や家族を含めた生活に悪影響を及ぼすと回答しています。継続的なストレスは、副腎がバーンアウトを起こすなど、健康問題を生じさせ、さらには精神の健康に影響を与えます。ストレスを消失させるのは困難ですが、バーチャル・リアリティはここでも役に立ちます。

穏やかな環境で、心が安らぐ音楽や音響があれば、誰でもリラックスができます。呼吸を整え、ストレスや不安を軽減するためのガイド付き瞑想を提供するバーチャル・リアリティプログラムもありました。これらのプログラムは、脳が他に集中できるものを提供し、痛みの刺激を和らげます。ストレスと痛みは非常に密接が関係あり、疼痛レベルを下げることはストレスの軽減につながります。

 

うつ病のためのバーチャル・リアリティ

うつ病と慢性疼痛には深い関係があり、慢性疼痛を抱える人の約85%が重度のうつ病を患っていると言われています。認知・行動療法は、うつ病に非常に効果的であると証明されており、そのためにVRプログラムに導入されています。

うつ病をバーチャルリアリティで治療する選択肢はあまり多くありません。プログラムの多くが、ストレスや恐怖症を助けるように設計されているからです。しかし、多くのVRゲームは、うつ病の方に効果的だとされており、うつ病の改善に役立つ可能性があります。うつ病が慢性的な痛みと関連している場合は特にそうです。VRで痛みが緩和できれば、うつ病の主な原因を除去できるのです。

うつ病患者のためのプログラムの作成に挑む人は多くいますが、それには時間を要するでしょう。不安な人を落ち着かせることだけでなく、もっと複雑なシナリオを秘めているからです。

 

最も効果的なVRプログラムとは

多方面においてバーチャル・リアリティは非常に有用なものですが、慢性的な痛みや喪失感に悩む人を対象とした特定のプログラムがあります。ここでは、その中でも特に人気のあるものをご紹介します。

 

BehaVR

BehaVRは、感情を調整し、ストレスレベルを改善するプログラム「Balance」をベースにしたVRプログラムです。このプログラムは、クラウド・プラットフォームにより患者の体験を管理し、ビーチや森など、その場にいるかのように感じることができます。これにより、リラックスし、気持ちの安定を図れるように設計されています。

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Cynergi VR

Cynergi VRは、薬物乱用、不安感、慢性的な痛みなど、あらゆる患者を支援する多様なVRプログラムを提供しています。これらのプログラムでは、音や映像、ガイド付き瞑想など、完全な没入型の体験を提供し、ユーザーの身体と脳のコントロールを支援します。

 

XR Health

XR Health社は、痛みに特化したバーチャルリアリティの遠隔医療キットを提供しています。簡単な評価の後に、患者の特定のニーズに合わせたVRセットを事前に提供します。痛みを和らげるプログラム、ストレスや不安を和らげるプログラム、記憶力の低下に対処するプログラム、さらには理学療法のためのプログラムもあります。

また、これらのプログラムは医療用ではありますが、多くの瞑想プログラムは、ユーザーの意識を苦痛から遠ざけ、心を満たすために役立ちます。

 

 

VRは医療技術になるべきか

バーチャル・リアリティの医療利用が優れた成果を上げ、病院や診療所でも一般的なものとして浸透しています。ほとんどの場合、バーチャルリアリティは薬と併用され、最良の結果が得られます。薬物療法では十分な効果が表れない場合でも、バーチャル・リアリティを用いることで効果を高めることができます。

痛みやその他の問題の緩和にバーチャル・リアリティが役立ち、素晴らしい効果を発揮しています。すでに一部の診療所や治療院では活用が開始され、今後は医療技術としての、さらなるVRの普及が見込まれています。

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