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スーパーピルは医療の新時代を切り開く

錠剤(ピル)は、誰もほとんど気にも留めないような日常生活の一部として存在しています。
しかし、それは医療技術の歴史の中で最も偉大な進化の一つなのかもしれません。

薬を投与する方法を考えてみましょう。溶液に混ぜるという方法もありますが、患者さんは投与量を正しく測れないかもしれません。鼻腔内スプレーとして投与することもできますが、患者さんの副鼻腔の形によっては噴射に影響する可能性があります。
注射をすることもできますが、これは痛みを伴いますし、面倒で現実的ではありません。

錠剤は、予測可能なルートに沿って投与することができ、正確に測定された一回量を提供できます。
錠剤はまた持ち歩くことも可能で、長持ちします。さらに、錠剤のほとんどは冷凍の必要性がなく、何年も保存することが可能です。

錠剤は昔からある技術で、製造技術が向上したとはいえ、錠剤の基本的な特性は何世紀も変わっていません。これが意味していることは一つ。つまり、新製品が取って代わるにはうってつけの分野だということです。

次世代の薬、スーパー錠剤(ピル)について検証してみましょう。

 

錠剤についての考え方を変える5つのテクノロジー

数年後には、薬局で自分の好みに合わせてデザインされた錠剤の処方箋を手に取ったり、wi-fi接続が可能な錠剤や、1ヶ月間胃の中に留まる錠剤を手に取ったりすることがあるかもしれません。ここでは、近くの薬局の商品棚に並ぶであろう5つの機能製品をご紹介します。

 

3Dプリンターからのオーダーメイド薬

医薬品の生産は非常に効率的なプロセスであり、製薬工場では毎時数百万個単位で生産しています。このアプローチをとるには、すべての錠剤が同一のものであることが前提となります。メーカーは、1つの錠剤の5mgと10mgのバージョンのような少量のバリエーションを製造することはありますが、それ以外のバリエーションを製造することはほとんどありません。

では、8mgの服用が必要な場合はどうなるのでしょうか?あるいは錠剤が大きすぎて患者さんが飲み込めない場合、または、錠剤にフレーバーを加えて、子供たちが飲みやすいようにする場合はどうでしょうか?

オーダーメイド薬、幼児用薬、3Dプリンター

そこで役立つのが3Dプリントです。英国のAlder Hey病院では、オーダーメイドの錠剤に子供たちがどのように反応するかを調べる実験を行っています。錠剤はプラセボ(偽薬)ですが、子供の患者に合うように形状、サイズ、味を最適化する方法についてデータを集めています。

3Dピルプリンターは、すべてのケースに適しているとは限りません。心臓の薬であるアムロジピンのような薬が、3Dプリントの処理中に臨床的に許容できる方法で放出されないことが分かっています。しかし、薬物治療に悩む患者さんにとって、オーダーメイドの錠剤は命綱になるかもしれません。

 

ポリピルは一度にすべてを届けてくれる

アメリカ人の半数が2種類の処方薬を服用しており、20%が5種類以上の薬を服用しています。医師が別の新しい薬を処方するたびに、新たなリスクが追加されます。患者さんが薬を飲み忘れたり、服用量を間違えたり、間違った順番で服用したりする可能性が出てきます。

しかし、もし医師が患者さん一人一人に一つの錠剤を処方できるとしたらどうでしょうか?その錠剤は、複数の薬剤が含まれていて、1回の投与量として提供することができるものです。複雑な薬物療法でさえ、この方法によって投与することができます。

これこそがポリピルと呼ばれるもので、特定の症状にはすでに利用できるようになっています。最初のポリピルは1999年に開発され、スタチン、アスピリン、血圧調整剤の混合物でした。典型的なポリピルは複数の層を持ち、錠剤の各部分が異なるタイミングで溶解します。

3Dプリントは、ポリピルの全く新しい世界を切り開きます。患者さんが互換性のある薬を服用している場合、患者さんの全ての処方箋を1つの錠剤にまとめることができます。薬入れを整理する必要はなく、患者さんはポリピルを1日に2~3回飲むだけです。

 

スマートピルがGPにデータを送信

IoT(Interet of Things)テクノロジーには、カメラや温度計などの単一目的のデバイスが多数含まれており、これらのデバイスはワイヤレスで中央のサーバーにデータを送り返します。多くの場合、これらのガジェットは非常に小さなものです。では、IoTデバイスを錠剤の中に入れることができたらどうでしょうか?

アメリカの企業、etectRxは、同社が開発したデバイスに関して2019年にFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けました。同社のスマートピルには、アドヒアランス(付着)モニターが内蔵されています。このセンサーは、胃の中に常駐し、薬を服用したときに報告する機能を備えています。医師はこのデータを見て、患者さんが服薬スケジュールを守っているかどうかを確認することができるのです。

このようなテクノロジーには無限の可能性があります。例えば、患者さんが腸内を探索するマイクロカメラ付きのスマートピルを飲み込めば、医師は患者さんに不快感を与えることなく、詳細な大腸内視鏡検査を行うことができるようになります。

センサーはそのほかにも、体温、血圧、インスリンレベル、またはその他の重要なマーカーをモニターすることができます。1つのスマートピルが何年も継続して機能し、信頼性の高い患者さんのデータを提供し続けることが可能になるかもしれません。

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1ヶ月かけて放出される長持ちする錠剤

薬をもらうとき、ほとんどは複数の錠剤が処方されます。例えば、感染症の治療のために、抗生物質を1 日 3 回7 日分、つまり合計 21 錠の錠剤を処方される場合があります。あるリサーチでは、最大60%の人が処方された薬を飲み終えられないそうです。(投薬の不遵守に関する関連リンク

では、代わりに一つの大きな錠剤を飲めばいいとしたらどうでしょうか?これが、MITで開発中の「長持ちする錠剤」のコンセプトです。初期の試験では、1日3~4錠を数週間服用する必要がある抗マラリア治療に焦点が当てられています。

ここでの目標は、2週間かけてゆっくりと放出される長期持続型錠剤を作ることです。患者さんが錠剤を飲み込むと、徐々に消化管の中で溶けていき、通常の治療コースと同じ効果が得られます。

皮下インプラントなど、長期放出型の治療方法は存在しています。しかし、これらの方法は痛みを伴うことがありますし、侵襲的であることもあります。長期持続型錠剤には、ピル本来のシンプルさがあり、患者さんが服用を忘れてしまう可能性はありません。これを応用できるとすれば、1回の服用を忘れると深刻な問題が起こる女性の避妊薬などが考えられます。

 

アプリでコントロールするデジタルピル

最終的には、錠剤は上記のテクノロジーを組み合わせたものになるかもしれません。完全にデジタル化された錠剤には、いくつかのIoT機能が含まれていて、さらにアプリからのコマンドで解除できる薬となるかもしれません。

例えば、カメラ機能付きの錠剤を考えてみましょう。医師は、これを使って腸内の潰瘍の進行状況を調べることができます。この視覚的な情報に基づいて、医師はデジタルピルからの薬の放出のスケジュールを設定することができるようになります。

このスケジュールはスマホのアプリでコントロールできるので、決まった時間に放出するように設定することも、食後に手動で薬を放出するように設定することも可能です。どちらにしても、薬を飲むことを覚えておく必要はありません。

デジタルピルのビジョンはまだ遠い先の話です。しかし、必要とされるテクノロジーの多くはすでに存在しています。未解決なポイントを下記にまとめました。

 

スーパーピルのリスク管理

テクノロジーは問題を解決しますが、同時に新たな問題も生み出します。インターネットの出現により、窃盗、詐欺、海賊版、規制されていないモニタリングなどの時代が幕を開けました。

そして、これらの問題は、医療が絡むと死活問題になりかねません。業界のウォッチャーはすでに、その先にあるかもしれないいくつかの問題点をを指摘しています。

 

無認可の製薬

3Dの医薬品プリンターにより、誰でも簡単に自分の薬を作ることができるようになってしまいます。このため、レクリエーション用の薬から未試験の治療法まで、無認可の医薬品が市場にあふれる可能性があります。警察はこのような裏工作を追跡して阻止するのに苦労することになるかもしれません。

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海賊版の医薬品

3Dプリンタ-は、認可された医薬品の偽造品も簡単に製造してしまいます。これはすでに問題となっており、毎日何百万もの偽造薬品の違法取引がインターネット上で行われています。新たなテクノロジーによって、これらの海賊版がさらに本物と見分けのつきにくい模造品を作りやすくなってしまいます。これは治療法の知的財産権犯すだけでなく、安全性の担保が取れていない薬を服用することで、患者にとってのリスクも高くなります。

 

身体のプライバシー

IoT対応のスマートピルは、ケアの質を向上させるかもしれませんが、患者の体に関する機密データを送信しているといえます。このようなデバイスには、データが第三者に拡散される可能性があり、プライバシーに関する問題が伴います。また、IoTシグナルが、何らかの形で、ユーザーの許可なしに人物特定に使用されるおそれがあるという問題もあります。

 

医療セキュリティ

どんな種類の接続デバイスでも、ハッキングされるリスクがあります。ほとんどのスマートピルは範囲が限られており、患者が首にかけるストラップまでしかデータが届きません。しかし、このストラップは患者のスマートフォンにデータを再送信するため、これらのデバイスはどちらも脆弱なポイントとなります。データを盗むだけでなく、ハッカーは、投与スケジュールを妨害するなど、スマートデバイスの操作を妨害することもできます。このようなシステムには高度なセキュリティ対策が必要になります。

医療技術のニューウェーブによって、ほとんどの人がより長く、より健康的な生活を送ることができるようになります。しかし、すべての進化が本質的に善良であると過信してはいけません。テクノロジーはあくまでツールですので、そのツールを私たちは良くも悪くも使用することができるのです。

どのような進化が待ち受けているにせよ、それは強力な医療倫理のシステムによって支えられていなければなりません。さらに重要なことは、医師と患者が、利用可能なすべての治療法についてオープンな会話をすることです。

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