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製薬業界におけるVRの活用方法

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製薬業界におけるVRの活用方法

VR (バーチャルリアリティ)は、古くからゲームやエンターテインメントの分野において利用されてきましたが、医療分野でも活用できることをご存じでしょうか。特に、製薬業界では、かなり有用であることがわかっています。

製薬業界で使われている例として、人々の注目を集めるためのツールとして利用されています。最新の技術や医薬品などを確認するため、展示会やイベントに行くと、VRやAR (拡張現実)ゲームがあることに驚くかもしれません。この場合、VRは実際には医療に使われていませんが、イベントで提供しているものを紹介し、人々の関心を引くために利用されています。しかし、VRには単にイベントブースで利用するだけでなく、それ以上の活用方法があります。

 

VRとは?

VRとは、その名の通り、構築された現実のことです。ヘッドセットを使用し、教室や乗り物、さらには体内など、別の環境に入り込んだような感覚を得ることができます。VRはテレビやコンピューターのモニターでも利用できますが、適切な道具を使えばより効果的になります。通常、手袋のような形状のデバイスや、スマホやタブレットといった手で持ち運びできるデバイスなどを使用し、実際に手を動かすことにより、仮想現実内で操作しているようにできます。

AR (拡張現実)は、VRと一緒に語られることが多くありますが、まったく違います。ARは、自分が別の環境にいるよう作るのではなく、すでに周囲にあるものを拡張して見ることができます。例えば、スマートフォンで部屋の中を見渡すと、実際にはないものがARゴーグルやデバイスの画面上に現れるといった技術で、「ポケモンGO」などのゲームがその良い例になります。

製薬業界では、ARを使用して薬品などを見た際、画面にその薬品の詳細な情報をポップアップ表示させることができます。今後、スマートフォンを薬品にかざしただけで、その薬品の用法や用量、識別情報や副作用といった情報がポップアップ表示されることを想像してみてください。今までの薬局などでの薬品管理の仕方など、考え方が変わるかもしれません。VR, 製薬, バーチャルリアリティ, ファーマテック, AR, 薬品

 

VRは薬の代わりになるか?

もちろん、すべての治療においてVRが有効というわけではありませんが、一部の問題などでは、実際にVRを用いることで良い結果になることがあります。例えば、精神的な問題の治療として、タバコなどの依存症を克服することにも役立ちます。VR用のヘッドセットだけでなく、香りを嗅げる機器も併用し、タバコを吸う衝動を抑えるといった技術革新もあります。

こういった技術は、薬物やアルコール依存症の予防にも使われており、その背景には人々を破壊的な行動から遠ざけ、誘惑と戦うために必要なツールを提供するという考えがあります。VRは、正しく使えば痛みの管理にも役立ち、中毒性が生じてしまう鎮痛剤の使用を減らすことができます。

精神的な治療に関しては、VR技術は全ての薬品を不要にできるというわけではありませんが、恐怖症や精神病の人を助けることができます。心理学者がVRを使ってPTSDや恐怖症の治療を始めてから、かなりの時間が経過しています。今日の技術は、マインドフルネスに焦点を当てており、不安や鬱などを和らげ、最終的に患者が薬品に頼らなくてもいいようになるかもしれません。

 

VRによる薬剤師育成

新しい機器の使用方法などの習得や、利用頻度が低い機器に関する知識を学ぶ必要があるのかは、適切なVR技術があれば問題になりません。研修中の薬剤師は、目の前に機器がなくても、使い方を学ぶことができます。

さらに言えば、VRを使うことで実際に動きながら、新しい技術や方法を学ぶことができるため、大規模な教室などを必要としないことが、今の時代には特に有効と言えます。ある程度の閉鎖された空間でも、VRを用いて実践的な技術で学ぶことができ、仮想的に身体の中に入り、どこに何があるのか、それぞれの臓器がどのような働き、どのように機能するかなど、正確に確認しながら学ぶことができます。また、身体の外側からや内側からの視点といった、さまざまな角度から知識をえることができる専用のゲームなどもあります。

実際には、コンテンツが魅力的であれば学習しやすくなり、VRを使用することで、完全な没入感はなくても、興味を持ち続けることができます。患者が薬に対しどのような反応をみせるのか、身体の反応を間近で感じたり、機器の内部を調べたりすることができます。学生が実際に機器に触れる前に、仮想空間で機器を動かし検査を疑似的に行うことができるため、自身で納得のいく学習を行うことができると言えます。VR, 製薬, バーチャルリアリティ, ファーマテック, AR, 薬品, 薬剤師, 教育, マーケティング

 

共感とマーケティング戦略の構築

VRは、医師が患者目線で確認することができるため、患者との共感を生み出すのに非常に便利です。医師や科学者、または薬剤師が、患者の症状や治療に対し何を感じ、何に困っているのかなどを把握できれば、患者に寄り添い、関係は良好になります。良い例では、ARを使って脳卒中の症状を患者にわかりやすく見せることができたり、夜盲症の患者には人が暗闇の中でどのように見えているかなどを示すことが可能になります。

また、製薬会社が、医師の関心を引きたいと考えたとき、特にマーケティング活動においては、より創造的になる必要があります。製薬会社の売り込みがつまらないものであれば、医師の関心を引くことは難しいと思います。製薬会社におけるVRやARとは、医師の関心を引くための手段でもあるのです。この技術は、投薬前後の患者の内部をわかりやすく見せるといった、医師に情報を提示する点においてはユニークな方法となります。また、場所をとったり、長い講義などを行うことなく、最新の薬品や画期的な技術に関する情報などを共有することができたりと、医師にとっても楽しいマーケティング体験と感じてもらえるはずです。

 

全体的に、VRは新しい視点を示すことに適しており、それは特に医療の現場では非常に貴重なものと言えます。今後、こういった新しい技術が、医学の発展にますます貢献していくのではないでしょうか。

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