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スマートシティ:産前・産後の交通支援

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スマートシティ:産前・産後の交通支援

 

スマートシティは、そこに住む、または訪れる人すべての生活がより快適で、安全に生活できることを目的としています。住民の中でも、妊婦や幼児は弱い立場とされており、このような人々を支援することを目的としたオハイオ州コロンバスでのパイロットプロジェクトが、他のスマートシティにも広がりをみせています。

 

出産前のケアが不足していると、妊娠・出産に伴う合併症を引き起こす可能性があります。医師が患者を定期的にチェックしていれば、子癇前症などの健康上の問題は通常すぐに診断されますが、妊娠中に医師の診察を受けられないと、このようなケアが受けられず、簡単な問題でも手遅れになってしまうケースがあります。

 

診察時の交通手段を提供することで、都市では妊娠中の死亡事故や合併症の数を減らし、比較的簡単な手順で実施ができ、多くの命を救うことができます。ほとんどの場合、アプリさえあれば車両を選択し、送迎のスケジュールを確保することができます。また、Uberのように、ビジネスの一部をこの可能性に特化させている企業もあり、より費用対効果の高い選択肢となっています。

 

 

産前・産後の交通支援とは何か?

 

産前・産後の交通支援とは、簡単に言えば、リスクのある妊婦が簡単かつ無料で医療機関に通えるようにするための交通プログラムです。乳幼児の死亡率が高い地域では、交通手段が限られていることがよくあり、公共交通機関は時間がかかり、面倒と感じてしまいます。多くの妊婦が、適切な交通手段を利用できないために、産前・産後を問わず、重要な検診を受けることができない場合があります。

 

妊婦と胎児の健康を守るためには、産前・産後のケアが欠かせません。母親が適切な医療を受けていれば、医師は潜在的な健康問題を早期に発見することができ、乳児死亡率の低下につながります。妊娠中や産後に医療を受けることは、より多くの乳児や母親が安心して暮らすために必要なことといえます。

 

スマートシティでは、住民を支援するためのより良いプログラムを開発する方法を常に模索しています。出産前の交通支援プログラムは、多くの地域で役立つ可能性がある分野の一つです。今のところ、この種のプログラムを導入しているスマートシティはほんの一握りですが、今後、よりたくさんの地域で標準的なプログラムになるでしょう。

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すべての始まり

 

オハイオ州のフランクリン郡では、乳幼児死亡率が異常に高いことが問題となっていました。具体的には、出生1000人あたり8.2人と他の地域と比べてもその数値はかなり高く、ある調査により、交通手段を持たない貧困層の女性が多く、確実に医療を受けられないことが主な原因であると判明しました。そこで、交通手段を確保し、医療従事者とのコミュニケーションを深め、総合的なケアを受けられるようにする方法が模索されました。

 

NEMT (非緊急医療輸送プログラム) に分類されるフランクリン郡は、米国内の他のNEMTプログラムを検討し、そのようなプログラムの1つであるBlueCare Tennesseeを参考にしました。これは、リスクの高い人々が医療や保険会社を利用しやすくするために機能し、交通手段として、第三者の技術仲介業者を利用していました。

 

2019年、コロンバスでパイロットプログラムが開始されました。このプログラムは、リスクが高いとされる8つのエリアに焦点を当て、総額130万ドルをかけて行われました。多くの女性がこのプロジェクトによって助けられており、他の都市も市民が安全かつ健康でいられるように、このプログラムを検討しています。

 

 

スマートシティが産前・産後の交通支援をどのように実現できるか

 

NEMTプログラムの青写真はすでに存在し、多くの地域がこの選択肢を持っています。リスクのある妊娠中の女性をターゲットにすることで、乳幼児死亡率を改善することができますが、スマートシティがこの分野に注力するにはどうすればよいのでしょうか。

 

まずは、必要性を判断し、予算を作ることが大切です。妊婦へのアンケートを実施することで、各都市のニーズをより正確に把握することができます。

 

次に、提供する交通手段の種類を選択する必要があります。すでに複数の都市でこのようなプログラムが実施されており、UberやLyft、さらには救急車まで、あらゆるものが利用されています。UberはHIPAA (Health Insurance Portability and Accountability Act) に準拠したサービスを提供しており、医療機関がアカウントを設定し、乗車ごとに料金を支払います。Uber Healthプログラムは、どこでも利用できるわけではありませんが、緊急性のない患者の輸送に優れた方法を求めている都市にとってはかなり役立つもので、またタクシーを利用するよりも安価に利用できます。

 

Transit Cooperative Research Programによると、メディケイド (アメリカの公的な医療扶助制度) はNEMTに毎年約30億ドルを費やしています。Uber Healthを利用すれば、その金額を大幅に削減でき、妊婦の出産前の予約などが容易になり、費用対効果も高まります。また、この方法を使えば、よくあるタクシークーポンの不正使用の可能性も低くなります。

 

これらの詳細を理解した上で、リスクのある人たちに交通手段を提供するのはとても簡単です。ただし、サービスを利用できる人たちに知ってもらうためには、ある程度の計画と宣伝が必要で、最もシンプルな方法であるアプリを使用する場合については、開発者の協力も必要になります。

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未来を考える

 

スマートシティは、将来の成長も考慮しなければなりません。プログラムが軌道に乗るのはやや遅いかもしれませんが、必ず成長していきます。つまり、交通手段の選択肢を増やす必要があり、都市はその成長に合わせて予算を策定しなければなりません。

 

具体的には、将来の成長パターンをすべて考慮して計画を立てることが重要です。せっかくプログラムを導入しても、計画性がないために中止になってしまっては意味がありません。

 

スマートシティは、市民を守り、生活を向上させることを目的としています。特に妊娠中の女性など、医療を必要としている人たちが医療を受けられるようにすることで、その都市に住む人たちの生活の質を高めることができるのです。デトロイトやコロンバスなどの都市がこのような取り組みを始めたことで、世界中でこのような取り組みが行われるようになるのは時間の問題でしょう。

 

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