AIが私たちの仕事や生活をどのように良くするのか

人工知能（AI）は、最も注目を集める話題の一つであり、テクノロジーの進歩は私たちの職場に急速な変化をもたらしています。医薬品の開発から食品の調理、管理業務など、あらゆる場面でAIが活用されています。これだけ多くのAIが進化し、さらに多くのAIが開発されようとしている中で、世界中の人々が、これらの変化が私たちの仕事にどのような影響を与えるのか、あるいは仕事を失うことになるのではないかと懸念するのは当然のことです。

しかし、現実には、AIは既存の従業員を置き換えるのではなく、補強を目的として職場に導入されています。テクノロジーではできないことを人間が行い、現在の従業員がよりよい仕事ができるようにテクノロジーが支援するという考え方です。ロボットやAIが仕事に影響を与えることは間違いありませんが、それによって仕事の数が減る訳ではありません。AIは人間から仕事を奪うのではなく、反復的で平凡な作業や、特に自動化が容易な仕事を引き受けています。

人間ならではのスキル

AIは実際に新しい雇用を創出し、求職者が失業を回避するのに役立ちます。世界経済フォーラムの報告書によると、AIは2025年までに合計9,700万人の新規雇用を創出すると推定されています。それは、AIが仕事全体を自動化するのではなく、仕事の中の特定のスキルを自動化するからです。すべての仕事はさまざまなタスクを実行するために必要なスキルの集合体であり、例えば、ソフトウェア開発者は、コーディングから対人関係のスキル、プロジェクト管理のスキルまで、さまざまなスキルを必要とします。

ヒューマンスキルは大きく分けて3つのカテゴリーに分類されます。

1. プロセス重視のスキル

高度に構造化されたわかりやすい環境での物理的または反復的な活動のことを言います。これらのスキルは、平均的な人の日常活動の半分を占めており、このグループには、家を建てる、書類を提出する、会計処理を行うなどが含まれます。

2. 定量的推論スキル

知性を必要とするスキルです。言語的知識、問題解決、論理的・数値的推論、分析の理解、プログラミングなどが含まれます。

3. 部門の枠を超えた組織横断的な推論スキル

社会的な能力や創造性と関係しています。職場でのこれらのスキルの例としては、戦略の定義、人の管理、感情的知性の行使、紛争解決などがあります。

AIはこれらのスキルにどのような影響を与えるか？

AIは、人間のスキルの3つのカテゴリーのそれぞれに異なる程度で影響を与えます。機械は、プロセス重視の定量的な推論スキルを使用する決定論的なタスクにおいては、人間よりもはるかに優れていますが、組織横断的な推論スキルを使うような、より曖昧なタスクは人間の方がはるかに優れています。

今後10年間で、プロセス重視のタスクの最大80％をAIシステムが担うようになり、人間はより高度な仕事に専念できるようになるでしょう。定量的な推論タスクは、人間と機械がそれぞれ約50％ずつ行うようになり、組織横断的な推論タスクは、引き続き人間が80％以上を行うのです。

人間と機械のコラボレーション

人間と機械が完璧に連携し、必要に応じてお互いを補い合う関係性が成立します。AI（機械）は、簡単な仕事をこなすように訓練され、高度な仕事の場合には人間の手が必要となります。

次に、AIが私たちの仕事や生活をより良くするための他の方法についても詳しく見てみましょう。

生産性向上のために

AIは、物理的なもの、取引上のもの、認知的なものなど、あらゆる種類の単調なルーティンワークを引き継ぐことができ、このような反復的な作業を人間からAIに移行することで、労働者の能力を高め、生産性と効率を向上させることができます。

例えば、コールセンターでは、生身の人間のエージェントとAIが同時に顧客との通話に対応することがあります。AIアシスタントは、顧客と話している間に関連情報を追求したり、担当者をさまざまなプロセスに導いたりすることができます。そうすれば、コールセンターの担当者は、情報を探すために顧客を保留にする必要がなくなり、従業員の生産性を大幅に高めることができます。

ヒューマンスキルを重視する

人間が行っていた基本的な作業の多くをAIが担うことで、人間ならではのスキルを強調することができます。上記の例では、自動化された担当者(AI)が、お客様の情報を調べたり、詳細を計画したり、指示を出したりすることで、人間の担当者は、お客様とのチャットや礼儀作法、よりパーソナライズされた対応などに専念することができます。機械が習得できるITスキルや業界特有の知識ではなく、このような人間のソフトスキルを重視した求人情報が増えていくことが予想されます。

また、人の判断や作業を含む一連の業務工程にAIを組み込み自動化した場合、人間の特性として大事なことは、創造的な問題解決が挙げられます。

企業はより自由に実験ができるようになり、より機敏に動けるようになるでしょう。特定の手順や操作が自動化されれば、製品の更新、新しい広告キャンペーンの実施、新しいポリシーの導入などが簡単かつ迅速に行えるようになります。組織は、従来のように新しい従業員を教育して変更を行うのではなく、機械のようなスピードで変更を行うことができます。自動化が進むと、ビジネスプロセスの変更が容易になり、人間はビジネスに貢献する新しい創造的な解決策を見つけることができるようになります。

より意味のある仕事をするために

AIは仕事の単調さを解消してくれるので、従業員は創造性やソフトスキルにより多くの時間とエネルギーを注ぐことができます。これにより、仕事がより意味のあるものになり、従業員は人間ならではのスキルを使って、変化を実際に引き起こし、インパクトを与えるチャンスを得ることができます。

Smartsheet社が行ったITワーカーを対象とした調査によると、回答者の78％が「自動化によって、仕事の面白さややりがいにもっと時間をかけられるようになった」と答えています。

企業はAIを導入することで、質の高い人材を集めて維持することを優先することができ、潜在的な従業員にとってより魅力的な企業になるでしょう。会社の評価が同じであれば、求人の候補者は、AIを使わない企業で働くよりも、AIの助けを提供する企業で働く方が魅力的であると感じるかもしれません。

AIの台頭に不安を感じている人も多いと思いますが、結論としては、現代の労働者が仕事の最も魅力的な部分に集中できるようになると同時に、企業が全体的に生産性と効果を高めることになります。AIによって私たちの仕事や生活が、より良いものへと変化していくのではないでしょうか。